酔の助閉店に思う。
5月15日
野木亜紀子さんのtweetで酔の助神保町店が閉店したのを知った。40年間続いた懐かしい佇まいのお店が消える。ドラマの風景としてたくさんの人の目に焼き付いている。まさにストーリーが宿る場所。
仮に金銭的に持ちこたえ、感染対策をしてお店を空けられたとしても、あの独特のごちゃごちゃ感が味だから、密です!感覚空けて!というわけにも行かない。こういうお店は多いだろうな。コロナ収束後は本当に街の景色が変わりそうだ。
これは完全に人災なのではないか。老舗の一等地を外資が狙っているという噂も聞く。過去に幾度もあったこういう危機を乗り越え、どうにか生き残ったお店たちも、ここで途絶えてしまうのか。
多くの人がすでに予感しているが、一度失われた場所は二度と戻らない。
生き残りと回復
津波被災した東北3県は、国や県が提案する巨大防潮堤の建設に同意するかどうかの決断を迫られた。安全を選択すれば、住民は高い壁によって、慣れ親しんできた海の風景から隔てられる。建設まで時間を要し、結果的に住民の流出が進んでしまったところもあった。反対に防潮堤建設に多額の投資をせずに、住民主体の街づくりを選択したところもあった。
このことと新型コロナを同等に語ることはできないにしても、「生活とはなにか」「守られるべきはなにか」という点は似通っているようにおもう。どちらも、単に安全に生き延びれば、それで幸せが確約されるわけではないという難しさがある。
今、わたしたちは新型コロナから命を守ることを優先して、多くを犠牲にしている。その中には、本来なら治療され回復していたはずの別の疾患の人達も含まれる。堅実に商いを営んできたにもかかわらず、国の支援もなく命を断ってしまった人もいる。新型コロナの感染者数や死亡者数に加えられない幾多の犠牲。災禍からの回復のときに、彼らの存在を忘れないでいて欲しいと願う。